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私は貝になりたい撮影秘話

 堀校長

 映画「私は貝になりたい」撮影秘話  堀校長

 東宝映画「私は貝になりたい」で、中居正広さんや仲間由紀恵さんに「理髪指導」を
行ったのが、中央理美容専門学校の堀純校長です。

 堀校長は本校4期生で、神奈川県理容組合で厚木支部支部長と県教育部長を歴任。

全国理容連合会の名誉講師として「ヘアカウンセラー」の資格講習の講師やヘアデザイン画
の第一人者として全国の理容師の指導に。平成19年に母校の中央理美容専門学校の
第7代校長に就任。現在にいたる。

 今回は校長ご本人に、映画の秘話を語っていただきました。

理髪指導をすることに

 「私は貝になりたい」の理容技術指導を全国理容連合会から頼まれた。

 この映画は時代が太平洋戦争の昭和20年前後の物語である。一人の理容師の物語で
主人公の清水豊松の役が中居正広さんで、その奥さん役が仲間由紀恵さんです。

 1958年のフランキー堺さん主演のテレビドラマのときは理容店のシーンは少なく、
理容の技術を見せるところはあまりなかった。今回は脚本家の橋本忍さんがシナリオを
書き換えて物語の上で理容のシーンが多くなった。そこで監督の福沢さんは理容のシーンは
できるだけリアルに細かく表現したいということで理容の指導を頼まれました。

仲間由紀恵さん編

 10月29日に成城にある東宝スタジオで仲間さんの指導をした。福沢監督の注文で
お客さまに刈布をかけるところから、顔を剃って、仕上げまで教えました。監督は、技術は
もちろんだが、刈布をかけたり、タオルを巻いたりするところが自然にできないと本職に
見えないと言われたので、細かいところまで指導をした。

 タオルを巻く、刈布をかけるなどは技術とは呼べないことが実際にやるとむずかしいのです。
理容学校で生徒に教えても自然にできるようになるには、かなりの時間がかかります。
演技の中でそれらしく見せるには本当に大変だと思います。

 タオルを使いこなすのはむずかしく、慣れるには時間がかかると思ったのですが、仲間さんは
短時間でなんとかおかしくない程度にはできるようになりました。学校の生徒にも見習って
もらいたいくらい気合いが入っていました。

 特に仲間さんは中居さんの頭を手動のバリカンで刈るシーンがあるのでバリカンの使い方を
重点的に教えました。現在、理容店では手動のバリカン(今ではクリッパーと呼ぶ)を
使うことが少なくなって、実際使うには電動式のクリッパーしか使っていません。学校でも
教えていないので、若い理容師では手で動かすバリカンは使えないでしょう。

 仲間さんは休憩も取らずに何度も何度も納得いくまで繰り返し練習していました。バリカンは
その辺りで「ちょっと練習」とは簡単にはいかないので、動かし方ができるようになったところで、
「暇をみて練習するように」仲間さんにお願いをしました。

中居正広さん編

 中居さんは別の日に同じように技術指導をしました。中居さんは特に鋏と櫛を使って
刈るシーンがあるので細かく教えました。もう一つはレーザーで顔を剃る場面があるので
そちらも練習しました。

 顔そりは技術も微妙なこともありむずかしそうだった。中居さんにも鋏とレーザーを貸して
練習するようにお願いしました。

 中居さんが苦労したのは仲間さんと同じようにタオルの使い方でした。顔をタオルで拭くのは
最後までなかなかうまくできなかったのですが、本番にはそれがかえってリアルに見えたのはよい
結果でした。

 中居さんは頭を刈るシーンがあり、鋏と櫛の操作だけでなく刈っている姿勢がそれらしく見え
なければなりません。当時使ってた理容椅子は初期のもので今の椅子のように技術者に
合わせて高さを調整できないので姿勢が今とは違います。映画やテレビのカットのシーンは
手元のアップが多く、そこだけプロがやる場合が多いのです。今回は理容店の場面が長く、
店の中での動きを含めて刈っている姿勢も出るので苦労しました。

 中居さんは、なかなかカンがよく、終わりの頃は格好だけは本職に見えるようになってきました。
本番でもよくできたと思います

いよいよ撮影 

 年が明けて1月からクランクインしました。理容店の場面から撮影に入りましたので1月から
2月にかけて10数回撮影に立ち会いました。理容店のシーンはそばについていて何かあると
呼ばれて指導しました。本番前にテストを繰り返すのですが、監督の注文や仲間さん、
中居さんの演技をそば見ていて気がついたところを直しました。撮影に入ると監督は本当に
細かいところまで見ていてその場で修正していきます。

 中居さんのカットシーンは手がよく動き、本当に当時の理容師さんらしく見え、心配ありません
でした。一番緊張したのは仲間さんが中居さんの頭をバリカンで刈るシーンでした。仲間さんは
本番に入る前にモデルウイッグの頭を一つ刈り、続いてスタッフの一人の頭を刈って本番に
のぞみました。本番は失敗が許されません。出来上がった映画のシーンでは回想シーンが
入り、途切れていますが、撮影の本番では刈りはじめてから終わるまでロングで30分位撮った
ので、周りで見ている者は、ハラハラしており、終わった時はほっとしました。仲間さん見事にやり
ました。

 撮影の最後の立会いは巣鴨プリズンでの場面です。矢野中将役の石坂浩二さんの
頭を刈る場面です。死刑にのぞむ石坂さんの頭を最後に刈るシーンです。

カメラに入らないくらいの近くの距離で見ていたのですが、何か自分もタイムスリップして
その場面に実際いるような感じがしました。 

撮影のサポート

 映画の物語が昭和20年前後のため、出演する人たちの姿、格好を当時のようにするのは
大変です。特に男性のヘアスタイルは坊主頭か短いスタイルが多いので、大勢エキストラが
出る場面ではその人たちの頭を刈る人が必要です。そこで1回は中央理美容専門学校の
理容科の先生方に手伝ってもらいました。朝早くから成城の東宝スタジオにあつまってもらい、
50人くらいの人のカットをしました。2回目は緑山のオープンセットで撮影をするので、やはり
大勢の頭をカットしてほしいということで私の店の従業員6人で行ってカットをしました。

ちょっと出演

 映画が始まって10分ぐらいのところで仲間さんが出征する中居さんの頭を坊主にする
シーンがあります。そのときの回想場面で仲間さんが勤めている理容店で中居さんが刈って
もらうシーンがあります。そこの理容店は8台店で仲間さん以外の従業員が必要です。
 8人理容師さんを集めてほしいと頼まれましたが、時間がなく無理なので急きょ私の家内、
息子と店のスタッフでお店を休んで出演しました。


出来上がって試写会

 当初から封切りは11月とされていました。わたしが最後に立ち会ったのは3月でした。
全体がクランクアップしたのが5月だそうです。できるまでがすごく長く感じました。

 試写会で映画を見た時は、シ-ンごとに撮影現場のことが思い出しました。中居さん、
仲間さんには慣れない理容の仕事をよくやってくれました。教えた甲斐がありました。
ありがとうございます。

 また、一般の方にはこの映画を見て、当時の理容店のことがわかり、今の理容業が
その時代から大きく発展してきたことをご理解いただければ幸いです。

  
堀 純



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