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沈まぬ太陽

(C) 2009「沈まぬ太陽」製作委員会

 

 

映画「沈まぬ太陽」の技術指導

     

~学校長 堀 純~

 

 

 山崎豊子原作の角川映画「沈まぬ太陽」で主演の渡辺謙さんが日本のアカデミー主演男優賞を取りました。その映画の中の理容室のシーン撮影のための技術指導をさせていただきました。

 

 平成21年4月21日午前10時にロケ現場に行きました。横浜の中区にある古いビルでした。3階の大きな広間が俳優さんやエキストラの控室になっていました。片隅はメイクの場所も用意されています。待っていると、すぐに俳優の渡辺謙さんと三浦友和さんが午前中の撮影が終わり、控室に帰ってきました。ご本人に会うのは初めてです。テレビ、映画で見慣れているので、初めてとは思えませんでした。お二人は午後の撮影はないらしく、私服に着替えてマネージャーと帰りました。

  

 今回は映画の中で理容室のシーンがあり、そこで働く理容師役をする俳優さん2人の技術指導を頼まれたのです。そのシーンは、理容室の中で当時の,利根川総理大臣と竹丸幹事長が出会い、話をする場面です。

 理容室は昭和の初期ころ建てられた古いが格式のあるビルの地下1階です。現在ビルは銀行協会で使っていて、理容室は3年前までは営業されていました。

設備はそのまま残っているので映画のシーンの時代にはピッタリの店なのです。

 理容室で理容師役の2人の俳優さんと打ち合わせをしていると、中曽根総理役の加藤剛さんと金丸幹事長役の小林稔侍さんがやってきました。シーンは奥の椅子で中曽根さんがカットされているところに金丸さんが顔剃りに来て、二言三言ことばを交わして、顔剃りに入る場面なのです。

 

 理容室が狭いのでカメラのアングルを決めるのに時間がかかりました。この前、手伝った映画の「私は貝になりたい」のときは、スタジオでセットを組んだので撮影はどの角度でも出来ました。今回はそうはいきませんでした。

 いよいよリハーサルです。加藤さんの方は良かったのですが、小林さんの方はうまくいきません。小林さんがお店に入ってきて、加藤さんを見つけ、ことばを交わして座るシーンですが、動きがあるために理容師役の人とタイミングがなかなか合わずに苦労しました。

 本番に入る前の休憩中、加藤さんは静かに椅子に座って待っていました。どこか体の具合が悪いようにも見えました。一方、小林さんは気さくな方でスタッフとわたしを交え、ご自分のこどもの頃の床屋さんの話など、いろいろ話しをしました。

 

 加藤さんは最近、テレビや映画にはあまり出演されないようです。しばらくテレビや映画で見てないためか、お会いしてイメージよりずいぶん年をとられたように見えました。以前は時代劇の出演が多く、わたしの好きな俳優さんの一人です。テレビの池波正太郎さん原作「剣客商売」シリーズがありました。それに先日他界された藤田まことさんが演じる秋山小兵衛の息子、秋山大二郎役で加藤さんが共演されていたので、必ず見ていました。

 

 小林さんはテレビも映画も最近大活躍されています。映画では浅田次郎原作の映画「鉄道員」に高倉健さんと共演していたのが、印象に残っています。テレビでは最近のシリーズで国税局の税務官窓辺太郎役で出演しているのをよく見ますが、ご本人と話してもイメージ通りの方でした。

 

 俳優さんに技術の指導をして気がついたのですが、むずかしいのはタオルを使う技術です。前回の「私は貝になりたい」のとき、中居正広さんと仲間由起恵さんが苦労したのもタオルを使う技術でした。そして刈布を巻くこともむずかしかったようです。

 このとき福沢監督は刈布を巻くのがすばやく自然にできないとプロらしく見えないといってダメ出しを多くしていました。簡単な初歩的な技術がプロには大切なことと教えられました。

 

 今回は出演する予定ではなかったのですが、急きょ出るというハプニングがありました。カットをしている手の部分がカメラのアングルからどうしてもアップになるので、俳優さんに代わってやってほしいということになったのです。カットをしている手だけ。ほんの瞬間ですが、出演しました。

 以前は映画やテレビの理容のシーンではおかしい場面が多かったのですが、最近はほんの少しの場面でも指導を専門家に頼むようになっています。

 

 理容のいろいろなことを広く知られることはうれしいことです。これからも依頼があればどんどん受けていこうと思っています。